FXの勉強をしていると、必ず出会う2種類の表があります。「この複利で運用すれば資金はこう増える」という複利表と、「勝率と損益率から破産確率が分かる」というバルサラの破産確率表です。

どちらの表も、数字が一人歩きして転載されまくっています。じゃあ、その数字って本当に合っているんでしょうか。気になったので、代表的な掲載例5件を全部、自分で計算し直してみました。

この記事のポイント

バルサラの破産確率表は、掲載例3件中2件で数字が合わなかった

原書に基づく破産確率表は正しかった

複利表は、検証した2件とも計算が合っていた

結論サマリー:合わなかったのは5件中2件、どちらも破産確率表だった

先に結論です。

  1. バルサラの破産確率表は、掲載例3件中2件で数字が合わなかった。「勝率50%・損益率1.0で破産確率50%」という主張は、正しくは100%。「勝率40%・損益率1.8で11.4%」という主張は、正しくは約0.14%でした
  2. 原書に基づく破産確率表は正しかった。バルサラ原書の表の値は、ボクの計算とほぼ一致しました。ズレるのは、原書から離れて数字だけが転載された先です
  3. 複利表は、検証した2件とも計算が合っていた。ただし2件とも「全勝し続ける」前提の計算です。複利表の問題は計算ミスではなく、前提のほうにあります

以下、1件ずつ根拠を示します。計算の前提と式はすべて公開しますので、気になる方は電卓や表計算で追いかけてみてください。

検算1:バルサラ原書の表は合っていた(誤差は丸めの範囲)

まず「本家」を確かめます。バルサラの破産確率は、フランスの数学者ナウザー・バルサラが1992年の著書で示した理論です。原書の表はリスク率(1回のトレードで資金の何%を失う設計か)ごとに分かれていて、ここではリスク率10%の表から3セルを検算しました。

ボクの計算方法は、資金を「1回の損失額=1単位」として、勝率どおりに増減するランダムウォークの破産確率を方程式で解く標準的な方法です。計算が正しいかどうかは、この原書の値と合うかで判定できます。

セル(リスク率10%)原書の値ボクの検算値判定
勝率35%・損益率2.060.8%60.9%一致
勝率45%・損益率2.03.3%3.4%一致
勝率65%・損益率1.00.2%0.20%一致

原書準拠の表は信頼して大丈夫、というのが最初の結論です。ついでに、計算方法そのものの裏付けとして、シミュレーション(モンテカルロ法、6万〜20万回試行)でも同じセルを計算し、式の結果と一致することを確認しています。

検算2:「勝率50%で破産確率50%」は合わなかった(正しくは100%)

次に、個人の解説記事で見かけた主張です。この記事は「リスクは資金の2%と仮定する」と前提を明記したうえで、代表値を3つ挙げていました。前提が書いてある分だけ良心的なのですが、その前提で計算し直すと合いません。

主張(前提:リスク率2%)掲載値ボクの検算値判定
勝率50%・損益率1.0 の破産確率50%100%合わない
勝率40%・損益率2.0 の破産確率42%0.006%合わない
勝率40%・損益率2.5 の破産確率25%未満約0%(0.000026%)桁が違う
勝率60%・損益率2.0以上 の破産確率ほぼ0%ほぼ0%一致

なぜ50%が100%になるのか。勝率50%・損益率1.0は、勝っても負けても同じ額で、期待値がちょうどプラスマイナスゼロの設計です。この設計を無限に繰り返せば、資金はいつか必ず尽きます。期待値ゼロ以下の設計は、破産確率100%。これは計算方法によらない理論上の結論です。

試しにリスク率を25%・20%・10%に変えて計算しても、勝率40%・損益率2.0は45.9%/37.8%/14.3%で、42%にはなりませんでした。掲載値の出どころは特定できませんでしたが、少なくとも明記された前提(2%)では再現できない数字です。

ぶた吉くん

「勝率50%で破産確率50%って、なんか”それっぽい”数字だよね」

ほ〜キング博士

「そこが落とし穴じゃ。期待値ゼロの設計に”ちょうど半分”なんて生易しい数字はない。もっともらしい数字ほど、検算なしに信じてはいかんのじゃ」

検算3:「勝率40%・損益率1.8で11.4%」も合わなかった(正しくは約0.14%)

もう1件は、企業が運営する情報サイトの主張です。「資金率2%・勝率40%・損益率1.8の場合、破産確率は11.4%」と明記されていました。

主張(資金率2%)掲載値ボクの検算値判定
勝率40%・損益率1.8 の破産確率11.4%約0.14%合わない(約80倍の開き)
損益率を1.0に下げると破産確率100%100%100%一致
2%ルールなら10連敗しても約82%残る約82%81.7%一致

同じページの中でも、合う数字と合わない数字が混在しています。11.4%という値は、ボクのモデル(トレード回数の上限なし・資金ゼロ=破産)では出てきません。「資金が半分になったら破産とみなす」「○○回までの範囲で計算する」といった別の定義なら出うる桁ですが、その定義は掲載側に書かれていませんでした。定義が書かれていない数字は、合っているかどうか以前に、比べようがないんですよね。

破産確率100%

ズレの原因は「リスク率」という前提が落ちていること

検算2と検算3に共通する構造を、ボクが再構築した表で示します。同じ勝率・損益率でも、リスク率が違うと破産確率はここまで変わります。

セルリスク率2%リスク率10%
勝率55%・損益率1.00.0044%13.4%
勝率35%・損益率2.08.4%60.9%
勝率40%・損益率2.00.006%14.2%

リスク率2%と10%では、同じ設計でも破産確率が3,000倍以上違うセルがあります。つまり、破産確率の数字は「勝率と損益率」だけでは決まらない。リスク率の前提が書かれていない破産確率の数字は、その時点で信用してはいけない、というのがこの検算いちばんの収穫です。

なお、バルサラの破産確率そのものの考え方や、自分の数字への当てはめ方は「バルサラの破産確率とは?勝率・損益率・リスク率から読むFXの資金管理の目安」で個別に解説しています(内部リンク予定)。

検算4:複利表は2件とも計算が合っていた。ただし前提は「全勝」

破産確率表がズレていた一方で、複利表は検証した2件とも計算が正確でした。

掲載例掲載値ボクの検算値判定
資金20万円・1回の勝ちで+4%・101回で1,000万円突破最終残高10,367,000円10,367,000円(完全一致)一致
同じ表の「単利なら1,225回かかる」1,225回1,225回一致
資金10万円・1回+2%を10回運用約121,899円121,899円一致
資金10万円・1回+2%を100回運用約724,465円724,465円一致

1件目の表は、ロットを0.01単位で切り捨てる現実的な計算まで再現でき、中間値(25回目528,800円、50回目1,404,800円)もすべて一致しました。切り捨てなしの単純な複利計算(1.04の101乗)だと10,505,029円になるので、掲載値はむしろ少し控えめなくらいです。

じゃあ複利表は信じていいのかというと、話はここからです。どちらの表も、負けが1回もない前提で計算されています。101回連続で勝つ。現実のトレードでそんなことが起きないのは、誰でも分かりますよね。掲載側も「全勝した場合の理想値」と注記はしている。でも、表の派手な数字だけが切り取られて広まると、前提のほうが置いていかれるんです。

複利の伸び方そのものは本物です。ただ、それを引き出す前提——勝ち続けること、途中で退場しないこと——の方がはるかに難しい。この点は「FXの複利シミュレーションで分かること」でも、資金全額レバレッジの計算をやり直して同じ結論になっています(内部リンク予定)。

複利の伸び方そのものは本物です

ぶた吉くん

「複利表は合ってたんだ。じゃあ、あの表みたいに増やせるってこと?」

ほ〜キング博士

「計算が合うことと、前提が現実的かどうかは別の話じゃ。101連勝できる人間は、そもそも表なんか見とらんわい」

騙されないための読み方:表を見たら先にチェックする3点

今回の検算から、表の読み方を3点にまとめます。

1. 破産確率表は「リスク率」の前提を探す

勝率と損益率だけ書いてある表は、その時点で保留です。リスク率2%と10%で数字は桁違いに変わります。前提が書かれていない数字は、自分のロット決めに使ってはいけません。

3,000倍以上

2. 「期待値ゼロ以下なのに100%未満」の数字は疑う

勝率×損益率が負け率以下なら、破産確率は理論上100%です。「勝率50%・損益率1.0で50%」のような中途半端な数字が出てきたら、その表はどこかで前提が壊れています。

3. 複利表は「負けが何回入っているか」を探す

全勝前提の表は、計算が正しくても「夢のカタログ」です。負け回数が入っているか、ロット上限などの現実の制約が考慮されているか。そこを見れば、表の性格はだいたい分かります。

まとめ

  • バルサラ原書の破産確率表は検算と一致した。ズレていたのは、原書から離れて数字だけが転載された掲載例2件
  • 破産確率の数字は、リスク率の前提なしには意味を持たない。前提が書かれていない数字を引用しないこと
  • 複利表は検証した範囲では計算が正しかった。ただし全勝前提であり、前提の非現実さとセットで読む必要がある
  • 表は「信じるか疑うか」ではなく、「前提を確認してから使う」もの。検算は、そのための一番確実な方法です

表は「信じるか疑うか」ではなく、「前提を確認してから使う」もの

数字は2026年11月1日に各掲載ページを確認し、同日に自前で再計算したものです。計算の前提・式・全結果は検証記録として手元に残してあります。破産確率は「前提が一切変わらない場合の理論値」であり、実際のトレードの結果を保証するものではありません。

✅ まとめチェック

✅ バルサラ原書の破産確率表は検算と一致した

✅ 破産確率の数字は、リスク率の前提なしには意味を持たない

✅ 複利表は検証した範囲では計算が正しかった。ただし全勝前提

✅ 表は「前提を確認してから使う」もの

ABOUT ME
tateppy
36歳、2児の父。18歳で株と投資信託に興味を持ち、21歳でFXに出会いました。最初はパチンコ代わりのギャンブルトレード。結婚を機に一度きっぱり辞め、生活が落ち着いてからテクニカルを学び直して再挑戦しています。「チャートを見ればファンダメンタルズは全部分かる」という言葉は信用しません。ファンダに順張り、テクニカルはトレンドフォロー。そして今いちばん意識しているのは、勝つことより負けを減らすこと。このブログでは、その過程を数字で検証しながら記録しています。